「私の好きな詩人」というテーマで書けという要請がありました。「私の好きな詩人」という題は「詩歌梁山泊」やら「詩客」と同様ダサい印象をうけますが、それはここでは措きます。
「私の好きな詩人」は、実はそのときどきによって変わるのですが、最近は藤井貞和をとても目をちかづけて読んでいます。とはいえ、独特の「貞和節」は、なまなかな読解をはねつけますし、1200字程度で十全に語れるものでもありません。したがって以下は潔く引用のみ。
昂然となりし白昼夢
かききえて
船
すべりゆくごときデモ隊
(『日本の<うた>はどこにあるのか』)
火の粉
無数の眼
円型の
安住
なべての
物思いして草湧く 神話
(同上)
その日なり バース来たりぬ
打つ人のバース 来たりぬ―
ビッグヒット ホームランなり 君は打つ 何をいまさら―
君は打つ むだにあらずや―
しかれども 打ちははやらず― 魔人 君 むしろ無造作―
場外へ運ぶ 純白
(『ピューリファイ、ピューリファイ!』)
短詩型、
わが、
短詩こそ、
収容所、
叙事を、
投獄の、
ごとく投函
(『ことばのつえ、ことばのつえ』)
(…)
道路には― 衣類散乱。どうやって
ampmまでたどりつけるか
(…)
バーミヤン洞窟の焼けあとの灰
仏像は― 吐く セシウム137
(…)
うたびとのはかなき楽器 住まわせよ
遂げむ空音(そらね)の五七五七七
五七五七七 五七 五七七
五七五七七五七七
(…)
現代詩、ルーツは― 連歌? 終わり書き
すべてむなしき 思いを問えば
(…)
初音 民 家に堕ちゆく 爆弾の
仮想ミクかな。 おどりませんか
(…)
うつりゆく どこに。ゆうびん番号と
おしえて。虹が住む 何番地
(…)(『東歌篇――異なる声 独吟千句』)