縁日の屋台のようなこの歌壇我もニッキを売りて連なる 稲田和之
読売歌壇(2010年11月16日)に掲載された作品。「朝日」の場合は歌壇も俳壇もそれぞれ4選者の共選制だが、他の新聞歌壇・俳壇は、おおかた投稿者が選者を指名するシステムになっているようだ。同じ作品を複数の選者に送らないように、というような注意書きが必ず付されている。(余談だが、先日[2011年7月17日]の日経俳壇・黒田杏子選の選評欄に、作品は必ず「タテ書き」で、という注意書きがあった。パソコンの功罪の「罪」の方にあたる問題だろうか。)
この稲田さんの歌は、当日の紙面の小池光選の欄の2首目。一読、クスッとしてしまった。小池さんの選評・・・「人生にお祭りは必要であり、お祭りには屋台が必要だ。本欄が縁日の屋台のようなものだという指摘は的を射る。金魚すくい、ワタアメ、時に、射的屋のようなものもある。」下の句の「ニッキ」はニッキ飴のニッキにして、わたしの歌はしょせん「日記」でございますという洒落だろう。小池さんは「的を射る」と評しておいて「射的屋」と返す。作者と選者との間で、時にこんな楽しいやりとりが成り立つこともある。