辺土通信47 味元昭次
落し文父の知らざる母の過去
骨壷を置くに音して夏深し
結果論の好きな男とところてん
兄が来て鰻の穴を囁きぬ
歯を抜いて敗者想えり半夏生
夏深し抜歯の闇へ舌がゆき
叩き上げの男と鯰を見ておりぬ
蟻地獄に蟻落し込むのは教師
ゲバ棒の昔を殺し晩夏の喪主
沈下橋は蜩を聴くためにある
作者紹介
- 味元昭次(みもと・しょうじ)
1947年土佐の国は佐川郷生。現在もそこに棲息。23歳で俳句と出会いずるずると今日に至る。都市より地方、利口より馬鹿、勝者より敗者、を好む。