「この道」のこと 男波弘志
秋風や手にとるように魚いて
鉢植をふやす隣人秋の風
白いところと黒いところと去ぬつばめ
水澄んでいること鳥鳴いていること
落葉掃く蜂の骸は別にはく
大袈裟に見まわして恋赤のまま
秋蝶や母美しきこと知らぬまま
赤とんぼそう呼ぶことにして母よ
秋の水母を母とも思わずに
母立っている雨やんでいる 秋
男波弘志(おなみ・ひろし)
神奈川県生まれ、香川県在住
師系 北澤瑞史(季主宰) 岡井省二(槐主宰) 永田耕衣(琴座主宰)
既刊句集 『阿字』 『瀉瓶』(田工房)
アンソロジー 『超新撰21』(邑書林)