



なつのあと オンデマンド版 山腰 亮介
な
つ
の
あ
と
波、
夜に
寄せる
金木犀の
ゆらぎゆく
波、
声の
きらめく
星屑の
匂う
台風のあと
まばたいていた
夕暮れの
樹々の
木の葉の
そばかすの
花びらの
灯りの
ゆらぎゆく
衣ずれの
匂いの
波、
手を振っている
あの夏の
あとの
夜は
きっと
もう
一度、
な
つ
の
あ
と、
も
う
一
度、
波、
夜
に
寄
せ
る
金
木
犀
の
ゆ
ら
ぎ
ゆ
く
波、
声
の
き
ら
め
く
星
屑
の
匂
う
台
風
の
あ
と
ま
ば
た
い
て
い
た
夕
暮
れ
の
樹
々
の
木
の
葉
の
そ
ば
か
す
の
花
び
ら
の
灯
り
の
ゆ
ら
ぎ
ゆ
く
衣
ず
れ
の
匂
い
の
波、
手
を
振
っ
て
い
る
あ
の
夏
の
あ
と
の
夜
は
き
っ
と
も
う
一
度、
詩は形を持たぬ/という頑な認識があり、私を捉えて離さない。 —— 瀧口修造*
*瀧口修造「アララットの船あるいは空の蜜へ小さな透視の日々」『点』No.4、点発行所、1972年、3頁。
制作ノート
改行とは〈余白〉である。改行は、言葉を断片化するとともに、言葉の無数の関係を立ち上げるための装置である。「なつのあと、もう一度、」は、すべての文字を改行で満たす(横書きとして捉える場合。ただし、ぶら下がりを許容した。「詩客」の自由詩は、縦書き(画像)と横書きでの掲載を基本としている)、あるいはすべての改行を取り払う(縦書きとして捉える場合。ただし、このテキストは横書きで組まれている)暴力的な操作を「なつのあと」に課すことで、言葉のあらたな関係=〈余白〉へと読者を誘う反復(リフレイン)である。
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オンデマンド版への註記
本紙は後日発行される詩集『なつのあと』のオンデマンド版です。A3サイズの紙(トレーシング・ペーパー、あるいは透ける薄い紙を推奨)に印刷して読むことを想定しています。データは以下からダウンロード可能です。
https://drive.google.com/file/d/1uyyJhCHib1HZWfHhfR6CcSRZc3QzjGaK/view?usp=share_link
印刷の際は、設定を長辺綴じの両面印刷にしてください。点線は、冒頭の画像を参考に、長辺側から山折りしてください。