七十九番 自然を詠む、人間を詠む(十二)
左
川のこゑ枯木の山を輝かす 相子智恵
右勝
焚火に浮きビニル袋や溶けつつも 相子智恵
前にも記しましたけど、「俳句」誌の「今月の10句」というコーナーを今年の一月号から半年間担当しまして、五回目、六回目の記事が掲載される号についてはこれから出るわけですが、原稿は提出し終わりました。やれやれです。あんまりいろいろ調査する余裕も無いし、「俳句」の連載なんだから「俳句」の中で十句拾って書こうというのが最初のもくろみだったところ、遺憾ながらそうは問屋が卸しませんでした。一句宛三百字弱の鑑賞文を付けるのがフォーマット。しかし、その程度の興をそそる句となると十句も載ってはおらず、頑張って五句でしょうか。まあそんなものかも知れません。ここのところ続けてご紹介してきた(これで最後です)「自然を詠む、人間を詠む」なんかは、中では読みでがあった方でした。
左句は、オン・チュウチュウ氏のひそみに倣って言えば、相田みつお系自然詠というとこでしょうか。予定調和な分、通俗的かも知れません。右句は、観察する視線が感じられて、その限りでは予定調和な感じはしません。右勝でしょう。しかし、「澤」のみなさんのこういう字余り粘着描写句もずいぶん長らく見せられているようではあり、ずっとこれで行くのかしらんとか思わないでもないです。
季語 左=枯木(冬)/右=焚火(冬)
作者紹介
- 相子智恵(あいこ・ちえ)
一九七六年生まれ。「澤」所属。