楠本憲吉の句・戦後俳句史総論担当
「―俳句空間―豈weekly」で共同研究<相馬遷子を読む>というシリーズを68回にわたって行い、現代俳句が忘れていた特異な俳人相馬遷子の再評価を試みた。同じ手法を通じて<戦後俳句>というより大きな現象を再評価してみようと言うのが今回の企画である。18人の総勢からなる共同研究は、ちょっとした”プロジェクトX”である。個々の作家研究も注目されるが、それらが総合されて全体として浮かび上がる<昭和>や<戦後>とは何かという問いかけは、今まで試みられなかった壮大な曲調を示してくれるかもしれない。特に、戦後の代表作家である飯田龍太、森澄雄、金子兜太、高柳重信の4人の登場しない偏愛的戦後俳句史は貴重である。18人の方々の御協力に感謝する。
さらにこの「俳句」の中には、自由律俳句や川柳という、伝統俳句派からは別のジャンルのようにみなされてきた不幸な短詩型が入っているのもユニークだろう。私は、こうした戦後俳句史全体を堀本、北村氏と再構成するために議論したいと思っている。
と同時に、もうひとつ、個別には楠本憲吉という俳人を取り上げて評価してみたいとも思う。常に、シュールにしてスマート、ニヒルで通俗的なこの俳人はあくまで時代に先駆けていた。いまは楠本憲吉の部分的模倣に過ぎない現象があまりにも多い。
執筆者紹介
- 筑紫磐井(つくし・ばんせい)
【筑紫磐井 -Tsukushi Bansei-】
1950年、東京生まれ。「豈」発行人。句集に『筑紫磐井集』、評論集に『定型詩学の原理』など。あとのもろもろは省略。