ポニーテール  野原亜莉子

  • 投稿日:2012年09月14日
  • カテゴリー:短歌

ポニーテール            野原亜莉子

去年(こぞ)の夏死にたるわれが会ひにくる とうの昔のワンピース着て

「混迷」の見出しが躍る新聞も関係ないと云ふやうな空

夏の水零れるときに光りゐて人形の髪のごとき冷たさ

靴擦れをしやすい(やは)な足をして夏の終はりの花柄ミュール

ゆくりなく老いゆくわれか人形は常に硝子の向かう側なり

幻想の少女笑つて過ぎゆくを粘土捏ねつつ捕まへよ、今

人形の言葉知りたし甘噛みのやうにくすぐつたがる耳元

美しき香気を放つ常夏のレモンのごとくわれは死すべし

今年また何事もなく過ぎてゆく ポニーテールを揺らして夏は

初秋はつあきのミシンかたかた動きをりもうすぐここは落ち葉に埋もる

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