てのひら、
てのひらの大きな
てのひらの大きな祖父はふんわりとウズラたまごを包んでみせた
てのひらの小さな傷は楔形文字のように並んでいたよ
二十年話さず生きてきたきみの言葉はこの
やわらかきその頬打った
伝言のかわりに吾が
テノヒラにココロのとびらがあるようで摩ってみたり擽ってみたり
くちゃくちゃに丸めてしまった便箋を広げていますテノヒラアイロン
幼子のぬくもりとどめるてのひらがわたしのおなかを温めている
てのひらを背中にあてて聴いているきみの心の風の音など
あなたの
作者紹介
- 東野 登美子(ひがしの とみこ)
1958年大阪生まれ 「アララギ派短歌会」所属
第一歌集「豊かに生きよ」(いりの舎)
エッセイ集「母へのラブレター」(共著)(文芸社)
人権ストーリー2007で全国地方新聞社連合会賞