愛憎家 鎌倉千づる
おおぞらに震える木立指差して母よ私は今日町を出る
負けにゆくただただ無意味に負けにゆく嗚咽が星屑に変わる夜
窓辺には頭を垂れる寒椿いつ何時迄にきみ誰が為に
見せる用の青痣ばかり作るならいっそ魅せようこの血飛沫で
好きと云うたびに何かが削れてく蜘蛛の巣を編む夏の夕べに
地下鉄のくるぶしねぶるぬるい風無数の私がちぎれゆく昼
ミルクチョコレートに語る午前二時愛のふりした因果のことを
熟れ落ちて潰れた果実拾う朝「確かに私は愛されていた」
泣き声と鳴き声の区別失くした日暁の色だけが消えない
今日もまた死人ばかりが美しいだから私は泥だって呑む
作者紹介
- 鎌倉千づる(かまくら ちづる)