仕方がない旅 北山あさひ
こんにちはさよなら同じ数あって教室にする風の横顔
吸い殻にまみれて街はおおいなる贋作ともだちになりましょう
生むような生まれるような毎日を励ましもせずパリの塔あり
一本のバケット武器にならざればこころを立てて雑踏を行く
いるだろう私と同じ顔をした物乞い どんな神様ですか
スカートの膨らむままに暮らしたい遠い遠いギャグみたいに
きみに王、私に皇帝 八月の練習帳(カイエ)に国土描き合っている
お祝いのように産毛は光るものセーヌはすでに死んでいるとしても
通じない会話に笑いころげたら明るく浮いた さよならバター
踊るなら今だろうなと思いつつ豪雨の十八区を走ってる
畳(じょう)という単位が胸に咲いてしまう私の国の私の家へ
まっすぐに貧富を生きてあの空のあの火の粉たちはだれの母国語
右岸左岸ひとしく今日を捨てていく風のまにまに 元気をだして
消えるのが約束なんて仕方がない移動遊園地いまは光ってろ
作者紹介
- 北山あさひ(きたやま あさひ)
1983年1月生まれ。札幌市在住。
まひる野、アークの会所属。
山川藍との短歌ユニット「北山川」でも活動中。