銀の鳥 浅野大輝
銀紙を小さな銀の鳥にするきみはゆふぐれ祈りのやうに
落鳥といひてしばらくうつくしき鳥の落下をまなうらに見ゆ
はつなつの船ゆるやかにゆれながらあそびつかれたものたちを、ここへ
ひとりまたひとり旅団をはぐれゆくひとみな風の記憶をつれて
くちなしの北限をもとめるこころありたりきみの言葉のなかに
想像のなかになんどもたふすため咲かす想像上のくちなし
消去法なれどしづかに選びだす迂回路すでに花に汚れて
うなづきをかへすはやさに日はさせり夏のいづれもむかふ風致区
感情のすがたを町にするときにどうしてここにある精米所
さうだなあ すべてがきみにもどること 上着のなかに日差しは残り
花瑠瑠とよびかけるときやはらかくぼくらのくちにある花の束
もういちど、とだれかが告げてもう一度夏にたふれてゆく遊撃手
だとしてもひとのいのりが白鳥を描く晩夏の夜はろばろと
水をやりそこねたことも語られて日記に花の飢ゑうるはしき
蕊ふかくふふみて朝顔のなかに空ありつねに朝焼けの空
浅野大輝
1994年生。秋田県能代市出身。
「塔」「東北大短歌」所属。「かるでら」「かんざし」同人。
短歌史プロジェクト「Tri」参加。