重なりあって咲いている白菊の花を雨粒が降りてゆく 雨滴の中に映った花に
お前はほんとうの花ではないことを告げる役を担うもののいない世界で
TLに咲く金木犀イヤフォンの中にも咲いて窓を開いた
飽食の時代の宝飾店のカフェ グレーのスーツの男ばかりだ
ringoって書いてあるから林檎だとわかる真っ赤な〇の記号は
無意識に選んでいるんだ、炭酸の気泡の音か雨の音かを
鈴虫がなけばなくほど深まってゆく静けさをあなたは眠る
水を飲むために目覚める 島影のように浮かんだ君のししむら
あのころの君に告げたい
踏切に造花の菊が手向けられ季節を越える純白のまま
火葬なら灰があなたの体温と同じになれる瞬間がある
かさねられ母音に打ち消される子音 異国の言葉で囁いていて