ココア週間   山田航

  • 投稿日:2018年01月06日
  • カテゴリー:短歌

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ココア週間   山田航

刷りたての切符のぬくみが手の中に届くこの冬最初の旅だ
ひかりってめにおもいの、と不機嫌だごめん寝てるのに電気つけちゃって
不器用に季節は過ぎて朝焼けにはじまるきみのココア週間
通り雨だったんだけどこの胸をしっかり黒く濡らしていった
浴槽の栓ひき抜けばりんと鳴るこれはあの夏なくした鈴だ
乱雑な仕草でポカリ注いでるきみらしくないきみがいちばんきみで
今日の『アメトーーク!!』のお題なんだっけそっかそれなら別にいいかな
コンタクトケースにふたつ凪いでいる湖 夜はいつも明るい
これでいいんだ ブラックコーヒー飲んだあと歯磨いたらいい味がした
人工音の半鐘がなるこの街に約束されたカタストロフィ
たどり着けない地点にも稲妻が走るさよならパノラマカメラ
創英角ポップ体あの看板が最高に似合うパスタ屋だったね
ふたりきりでするUNOのこと飛ばすのもひっくり返すのも同じことだよ
電線で切り刻まれた三日月のひかりが僕をずたずたに照らす
湖にあしくびしずめスカートを焦がしそうで焦がせない手花火
金魚、いい音で鳴りそうだねおまえそのひらひらもかっこよくって
しずかすぎる世界を燃やし切る前に雪平鍋に立ちのぼれ泡
チェスの駒散乱の床 エンジェルを演じる衣裳ほら脱ぎ捨てて
この鼓動を駆使して走る終わりなき21世紀の地下道を行く
何度でも反復される擦過傷、夜明け間近のひかりの淡さ

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