道化師の朝    みかみ凜

  • 投稿日:2019年10月05日
  • カテゴリー:短歌

tanka1005-02

道化師の朝    みかみ凜

朝焼けは静かに終はりサーカスのテントの奥より炊飯器鳴る
十合のご飯がびつしり炊き上がり拍手音にヘラを差し込む
道化師やライオン使いになる前のあかときにひびく箸を割る音
指先のすべてが天秤皿めけりネイル乾かすときのマジシャン
生きることと夢が重なるたくさんの金の折り紙星形にあり
道化師の目尻を正しく描くために近視の絵師が持つ青絵の具
つなわたり歓声に耳を澄ましたらシロツメクサの草原をゆく
手品師がシルクハットに隠してる花や鳩や不道徳の気配
特別でもつたいなくて大切な(そのままなくす)金の折り紙
道化師の家に表札 つじつまがあはない世界をまたあそびたい

みかみ凜
日本歌人所属。平成25年「きつね森」で第56回短歌研究新人賞次席。

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