インディアンえくぼ    山本 夏子

  • 投稿日:2020年11月07日
  • カテゴリー:短歌

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インディアンえくぼ    山本 夏子

飛行機にはじめて乗る子が指をさす雲のかたちはこころのかたち
わたしだけが乗り物酔いをする家族いちごの味の二粒を嚙む
風が、波が、くすぐっていくインディアンえくぼが浮かぶ娘の頬を
シュノーケルマスクのなかで泣きながら子はとうめいな海を怖がる
子が摑むニヌファの背びれイルカにも一重二重のまぶたがあると
おひさまがわらってるってほんとうは人が笑われてるんだよ、ママ
夕虹が空に帰ってゆくまでを見ている噓を許そうとして
棒立ちのビーチパラソル雨の降る恩納おんなの海は墓地に似ている
原子炉と棺はおなじ数え方ちぎれたままで雲が流れる
生き方を見せてゆくこと貝がらのここまで割れずに来たのを拾う
だっこって一度も言わなかった子のマリンシューズが吐く白い砂
終えるために予定を立てていたような あったところへすべてを戻す
ヤシの絵と「おきなわたのしっかた」の文字ひかりのくにの自由画帳に
太陽になりたいなんておもうことあっただろうか 木星が

山本 夏子(やまもと・なつこ)
1979年大阪生。「白珠」所属。
2016年、第四回現代短歌社賞。第一歌集『空を鳴らして』(現代短歌社)。
2018年、日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集賞。
Twitter:@yamamotonatsuko

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